「女らしさの解剖学」女をハダカにしてみたら? 其の二十八『媚態と眉の危ない関係』
女は自信があった。眉をすぼめてみせるだけで、男を一匹、誘惑できるということを。
案の定、今夜のワインバーでも釣れそうな男が何人かいた。(ブログ発の本!『トゥルーSeX』)
その中の一人と目が合った。だから、するとはなしに眉をわずかに動かし、視線を返した。男は思ったとおり、こちらにやってきて左に腰掛けた。
男は、「なぜ君のような女が一人で呑んでいるのだ、」と、もっともらしいことを言って、女の右肩に手を置いた。
そうして、タンクトップから出た肩を撫で付けた。
女は、その男の手に左手を置いて「ただ私が抱きたいだけでしょ?」
男は、笑いながら「それのどこがいけないのだ」と言った。
女は「フーン、たしかに、何もいけなくはないかもね」
「それなら、話は早い、さっさとホテルへ行こうぜ」
「そういう口説き方って、以外に悪くないかも」
わずかな会話を交わし、ベッドインするまで半時間もかからなかった。
今まで釣った男の中では「かなりまし」だと思った。抱き方は荒々しく無骨であったが、一度で終わらず、挿入を繰り返して女をクタクタにさせた。
だから、女は眉を動かして、男にすがりついて言った。
「ね、一度きりにしたくないの、今度はいつ会える?」
女は、ふと思った。自分から男に媚を売るのは、きっと初めてだろうと……本気になってしまったのかもしれないと思った。
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媚態と言えば、女が男をそそのかそうと猫なぜ声で近寄り、そして艶(なま)かしい様子を見せる……というイメージが沸いてくる。
けれども、別に女に限った言葉というのではなく、男が媚態をとることだってあるのだ。その場合には、何か腹黒いことがあって、こびへつらうということになる。
いずれにしても、姑息(こそく)な『女々しい』態度ということである。『女らしい』が褒め言葉であるのに対し、『女々しい』は貶(けな)し言葉である。
そもそも「女に眉」と書いて『媚』という漢字になる。たしかに、女にとって眉というものは、非常に大切な感情表現の部位である。
女の眉はよく動く。それはなぜか?
女は驚きや恐怖に対して、男より鋭敏に反応する。動物行動学の学者も、そのことに気づいて報告している。
平素から女のほうがよく眉が動くわけだが、たとえば、いままで感情表現に乏しかった女でも、恋人ができたとたんに、些細なことに肩をすぼめ、眉をしかめるようになる。
『ぶりっこ』ともとれる女の態度でもあるが、いずれにしてもわざとらしいというより、本能のなせる業なのだ。
女は、子を産み育てる。この子育てのための防御手段として、驚きの表情は、危険をいち早く子に伝え、危険から回避させるのに役立ってきたのだろう――少なくても野生生活の中では、そうだったのだろう。
女の眉には歴史が刻み込まれている。
平安時代の貴族の女は、眉を剃り落とした。この風習は継承され、皇族、そして既婚の女は眉を剃り落として、しかも鉄漿(おはぐろ)にするのが常識であり、女の美であった。
明治政府は、西洋人の警鐘を受け、眉を剃り落とすことを禁じた。それでも国民はそれを「気持悪い」と従おうとしなかった、だから、お手本として、皇后様が眉をお残しになされた。国民は皆、それを悲しんだ……。
現代になって、眉は細くなったり太くなったりしているが、おおよそ細い眉が好まれる流行のほうが長く続く。
細い眉のほうが、じつは感情はわかりにくくなる。だからというわけではないだろうが、長さを出すことが肝心で、眉墨でしっかり、眉を描き足すことになるのだ。
眉毛がある動物というのは、おおよそ人間だけである。だからこそ、SeXアピールとしての眉を、女は今日も丁寧に手入れするのだろうか。
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