第九十話・男に伝えたい「女のオルガスムス」男だってクリトリスがある?
女は思った。男の性欲を満たすための商品と商売が、どうしてここまで多いのだろうと。映画、雑誌、漫画。デート倶楽部、テレフォン××に、ネットチャットに、デリバリーに、口のマッサージ、本番の風俗店……これでもか、これでもかとある、男のための性の商品と商売。「男って汚らわしい動物、いやらしいだけ!」と、思いながら、それでも男に恋する女……。
それにしても、なぜ男はスケベで当たり前で、性的な遊びをしても咎(とがめ)られないのだろう。なのに、女は性欲を正直に表現することさえ、控え目にしなければならないのだろう。ちょうど、自分と彼氏の関係のように、あまりに男本位ではないか、そう女は思った。
彼氏は、ホテルに入ると、まずAVを嬉しそうに選んだ。そして、それを眺めながら、彼女のカラダを愛撫して、挿入した。せっかく、彼が解放される場所だから、ほんとうに楽しそうにしているから、それはそれでかまわないと思った。でも、AVに合わせたように、同じ頃に射精して、女優がされたのと同じように、彼女の顔にかけたり、口の中でいって、それを呑めと命じた……なにか違ってやしないかと思った。女は、心寂しくて仕方なかった。
だから女は、男と別れた晩にかぎってオナニーをした。ハンパに愛された、生煮え状態のオルガスムス。それを鎮(しず)めるために、自分で自分のクリトリスを念入りに愛撫しなければならなかった。本当なら、ストレートに椅子の縁や、机の角にクッションをあてがって、そこにヴァギナを押し付けて、擦(こす)る――子供のときからしてきたオナニーがやりたかったけれど、一気にいってしまうでは、もっと心寂しくなりそうだった。だから、オルガスムスに達するまで時間のかかる、クリトリスを愛撫するオナニーを選んで、カラダを慰めた。
メスが最も感じる処、クリトリス。オスと比較して、「小さなぺニス」とか、「退化したペニス」とか云うことがある。しかし、はたしてそうであろうか? 人間を含め、哺乳動物は、発生した時点では、すべてメスなのである。それが母体にいる間に、ホルモンの作用で、約半数がオスになると云われている。初めはメスであったのだ。だから「退化したペニス」は、理屈に合わない。
また、前述したように、クリトリスはじつは、陰唇の下に広がる大きな器官であって、一般的にクリトリスと呼ばれる小さなポッチは、その先端部分が露出したにすぎない。陰唇の下に埋まったクリトリスの基部を入れて、全体を眺めてみれば、それが突出したものが、ペニスであることが明瞭になる。だから、クリトリスは「小さなペニス」ではなく、ペニスのほうを、「大きなクリトリス」または「突出したクリトリス」というべきなのである。
「卵が先か? 鶏が先か?」じつは「クリトリス」が先なのだ。屁理屈ではなく、考え方の問題なのである。性において「男本意」がはびこり、女を寂しくさせているということの証なのだ。じつは、男だってクリトリスを持っているのだ。男が、その股間にある「突出したクリトリス」が望むこと、それと同等のことを、女のクリトリスにしてやったことがあるか? 自信をもって「イエス」といえる男はどれだけいるのだろう。(Photo/Fruse Model/Luliha)
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