第九十五話・男に伝えたい「女をいかすには?』本能のままに
女は、男と別れられずにいた。『一緒になる気がない男』だから、かえって別れにくい。そういうことにも、とっくに気付いていた。
男には家庭があった。だから、自分に向けるものは『性欲』でしかなかった。満たされない男の欲望と寂しさ、そのはけ口として、自分を抱く。だからこそ徹底していやらしく、激しかった。
カラダじゅうに痺(しび)れが走るほど、自分を深く強くいかせてくれた。オルガスムスで、自分をがんじがらめにする男。なんて、いやらしい男だと思ってみても、三日もすれば、知らずと抱かれたくなった。
女は思った、男を、いやらしい動物だと思ったのは、何時のときなのかと。身近な処で、その「初めてのこと」は起こった。しばしば一緒に寝泊りする従兄(いとこ)とのこと、それが『初めてのこと』だった。
休みといえば、母方の実家に泊まりにいった。そして三つ年上の従兄と布団を並べて寝た。そのときも、従兄と一緒に布団に横になった。大人が消えた座敷で、従兄が言った「女の子のアソコを見せて」
女の子は、その従兄に素直に従った。従兄は、座敷をほのかに照らす小さな電気スタンドを手にして、布団に潜り込んだ……。
次に実家に泊まりに行ったときにも、従兄は同じことを言った。女の子は、今度は「ダメ」と言った。そしたら従兄は「なら、お小遣いを分けてあげよう」と言った。女の子が迷っていると、男の子はポケットから小銭を出して、それを女の子の枕に置いた。
女の子にとって、二百円はとても魅力的だった。だから、従兄に二つ返事をした。せっかくだからと、初めて自分から下着を下ろした。
たったそれだけのことで、二百円ももらえるなんて、なんて簡単で凄いのだろうと思った。そうして、お小遣いが千円も貯まったとき、女の子は、急に不安になった。だから、次に泊まりに行ったときには、「お金はいらない」と断った。そうしたら、従兄はムリヤリに女の子を押さえつけて、下着を下ろした。
女の子は、思わず声を出しそうになった。けれども『大人に知れたら叱られる』そう思って、手のひらで口を押さえた。『いやらしいこと』それはワクワクする楽しいことなのだと知った。
女は、それは今も変わってなことだと思った。男はいやらしく、ただカラダが欲しいだけ。けれども、いやらしいからこそ、惹かれて離れられなくなる、そういうものだと思った。
女が女であると意識し、男が男であると意識する。そこから恋が生まれ、また性愛も生まれる。万葉集では、妹(いも)と背(せ=兄)として歌われている、女と男。恋人どうし、または妻と夫の呼び掛け方である。古代において、身近な人間どうしで小さな集落を作ったこと、さらに近親婚も行われていたことと無関係ではないだろう。ともかく、兄と妹が男と女の始まりということである。
初めは、ただの妹と兄。それが、ある日突然、性に目覚め、男になり女になる。
「大人の世界」は、大人が作り上げたものではなく、すでに子供の時に始まっていたのだ。大人の性世界。それは人間の本能が作った、古代から変わらぬ世界なのだ。
女は、本能まかせにカラダを求める『いやらしい』男を、心のどこかで待ち望んでいるのだ。そういう男こそ、『いかせて』くれる。それを、女は本能で嗅ぎ取り知っているのだ。
だから――男に伝えたい。女をいかせたいのなら、本能を隠すことなく余すことなく発揮して、徹底していやらしい自分を披露すること、それに限るのである。
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